タイトル等
Bruno Mathon 展
Toucher l'ombre
―影に触れる―
会場
ギャラリーなかむら
会期
2012-05-22~2012-06-17
休催日
月曜日休廊
開催時間
11:00am~7:00pm
概要
1997年の冬パリ、彼のレジデンスには一枚の大きな絵が掛けられていて、それは緑の芝生の中の一軒の家と大きな木、そのそばに不安げに佇む一人の少年、足下にはロープがまるで蛇のように横たわっていた。謎ときのような、象徴的な意味を深く内に秘めた不思議な繪だったが、その静かで内省的な世界は強く僕を引きつけた。それがブルーノとの最初の出会いであった。彼はその後、大きな悩みの中に落ち込んだという。絵が描けず、長くて惛トンネルのような苦悶の時間を、彼は自力で抜け明るい実存の場に立ち戻った。そこに具象的な形象は消え、秘された象徴ではなく空間に確実に刻まれた存在の軌跡、線と面であった。 2007年、僕は彼のアトリエでそれらドローイングの作品群を見た。
紙と言う素材、それは時空の広がりであって宇宙とも言える平面に、線は震えるように始まり突然に止まる。また別の線と面が現れる。それは決して一時代前の抽象構成ではない。その頼りなげなそれらの線や面は、この上もなく愛おしい事物の存在そのものの辿った軌跡のように思える。我々も含めて世界に産み落とされた事物が、それら固有の時間制と空間を歩みやがて消える。存在の軌跡、まさにそれは固有の命。細く繊細な弦楽器の一筋の音がゆっくりと空間に漂うように、それらはいつ生じいつ消えていったのか、どこへ行こうとするのか・・すべては不知不詳の頼りなげな身分をひたすら生き、過ぎてゆく。あらゆる属性や社会性は削ぎ落とされ、存在そのものの固有性とその確かさこそが、世界の中で生起する唯一確かな無名の意味であるとでも言うように。
僕ら二人は深い共感の下に二人展を開いた。それが先月まで半年をかけて開催した佐川美術館での彼のドローイングと僕の陶立体の展覧会であった。
それから半年後、彼は今回の個展のための制作をした。思索の人はここでも小さな苦悶の時間を乗り越え、新たな表現へと踏み込んでいる。そこには存在するもの達の愛おしき軌跡の他に何かが加わっている。それはさて何であろうか・・・。彼は決して同じ所に留る事の不可能性、つまり芸術家の宿命、業を生きている。
今回の個展はそうしてできあがった新作ばかりで行いたいという。
2012年4月
友人 樂吉左衞門
会場住所
〒604-8005
京都府京都市中京区姉小路通河原町東入恵比須町424 2F
京都府京都市中京区姉小路通河原町東入恵比須町424 2F
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