「型紙」とは、江戸小紋や長板中形、型友禅などの染色工程で用いられ、柿渋で貼り合わせた和紙に、特製の彫刻刀で多様な文様を彫リぬく伝統的な彫刻技法です。江戸時代中期以降、三重県鈴鹿市の白子・寺家地方が、独占的に生産・供給し、型紙といえば「伊勢型紙」と呼ばれるほどになりました。
この日本の染色文化の大きな柱を担っていた型紙が、19世紀後半、江戸から明治へと時代が移り変わるちょうどそのころ、何千何万という単位でヨーロッパを中心とした海外ヘともたらされた事実はほとんど知られていません。型紙のもつ繊細にして斬新なデザインは、現地の画家や工芸家、デザイナーたちに大きな影響を与え、各地で浮世絵に次ぐ、「もうひとつのジャポニスム」と呼ぶべき熱狂の渦が巻き起こりました。
2012年8月、三重県立美術館30周年を記念してお送りするのは、日本の伝統工芸である「型紙」を軸にヨーロッパやアメリカの近代さらには現代の美術まで、時代やジャンルを超えて横断する、全く新しい試みの展覧会です。
展覧会は、国内外の70か所にものぼる所蔵先から集めた作品約400点によって構成されます。「型紙」から「KATAGAMI」へ。ある時は絵画に、ある時は工芸に、ある時はデザインに。様々な形で織りなされる型紙をめぐる物語をぜひご堪能ください。