私は現実を
ある種の《夢》として
描き表そうとしてきました。
事物が本物らしい様相を
保ちながらも
詩的な意味を帯びている、
そんな夢として。
―ポール・デルヴォー
白昼夢のような情景、古代風の建物が並ぶ街、走り抜けていく鉄道、そして静かに佇む女性。ベルギーの画家ポール・デルヴォー(1897-1994)が描く世界は、夢と現実がひと続きになった甘美な幻想に満ちています。
デルヴォーは、印象派風の風景画やベルギーの表現派に影響を受けた人物画を描いていましたが、1930年代にシュルレアリスムに触れ、独自の作風に向かいます。自らの体験と深く結び付いた、思い入れのあるモティーフが重要な役割を担い、鉄道や駅舎、女性像、骸骨などが繰り返し登場し、デルヴォー独特の神秘的な世界が描かれました。
この展覧会では、作者の愛蔵していた鉄道模型やオイルランプなども展示し、絵画に表れるモティーフの起源をひもときながら、デルヴォーが生涯にわたって試みた夢の探求を紹介します。出品作品の約半数は、日本で初公開のものとなります。