マリー・ローランサン(1883-1956)は、ピカソをはじめとするパリの先進的な芸術家たちと交流し、淡く甘い色づかいと憂いをたたえた詩的な女性像で一世を風靡しました。一方、パリで学んだ東郷青児(1897-1978)は、優れた技術に支えられ、洗練されていながらも誰にでも理解できる女性像を目指しました。
両者が描く独特の女性像は、多くの人々にとって憧れ、嫌悪、美、醜、芸術、流行といった様々な感覚を沸き上がらせます。彼らの作品は、その人気の高さに相反するように、批評家たちの間では、しばしば「通俗的」「大衆性」と批判されることもありました。女性像を描くという芸術におけるごく一般的な表現にもかかわらず、何故ここまで評価が分かれるのでしょうか。
本展では、二人が影響を受けた同時代の両家たち―モディリアーニ、ユトリロ、ココ・シャネル、竹久夢二ら―の作品とともに、「わかりやすさ」と「大衆性」の裏に秘められた、ロマンティックで洗練された新しい「美」を紹介します。