97歳の長寿をまっとうし、約70年間にわたって絵を描きつづけた熊谷守一(岐阜県中津川市、1880-1977)。草花や小さな虫たち、猫、鳥などを、平明で鮮やかな色彩と明瞭な輪郭線で描く独自の作風は「モリカズ様式」と呼ばれ、長い画業のなかで模索を重ね、確立されたものです。
守一の油彩画は小さく、多くは四号の板(約24×33cm)に描かれています。かつて画家仲間からは「天狗の落とし札」と呼ばれることもありました。しかし、そんな小さな画面に、守一は身近にある「いのち」の輝きを描き、無限に広がる世界を表現しています。
作品のみならず、その生き様も多くの人々の関心を集めています。特に2000年以降、守一を紹介する展覧会は日本各地で開催され、数々の刊行物も世に出されました。作品の多くは美術館に所蔵され、展覧会でも公開されてきましたが、個人で所蔵されている作品をはじめ未だ紹介されていないものもあります。
生誕130年、没後30年を過ぎてもなお、私たちを魅了しつづける守一の作品とその人物像に迫るため、本展では、代表作と新たに発見された作品を含めた油彩画144点、日本画26点、書10点により、超俗の画家・熊谷守一の魅力を再検証いたします。