身近な草花や動物を写生し、その生命感あふれる姿を表現した彫金の重要無形文化財保持者(人間国宝)増田三男(1909~2009)。
埼玉に生まれた増田は、東京美術学校で清水南山(亀蔵)に彫金の技を学び、卒業後は、陶芸家富本憲吉から工芸制作においても個性を尊重する姿勢、「模様より模様を造るべからず」の精神を学びました。身近な草花や、蝶や鹿やウサギなどをモチーフとした装飾模様を、確かな彫金のわざで表現したその作品は、生命感あふれ、移ろいゆく季節や時間、その場の気配までもが感じられます。
増田は、生涯現役をつらぬき、晩年も、自宅の庭先のアトリエ「三愚亭」で、朝から夕方まで制作に打ち込む生活を続けていましたが、一昨年、100歳の天寿をまっとうし他界しました。
会場では、増田の代表的な作品でその生涯のあゆみをたどるとともに、香炉の火屋の制作を通じて親交の深かった富本憲吉から増田が学んだ写生から模様へという創作のプロセスを、スケッチなどの資料から探ります。