■岡田忠明の世界
宝木範義
岡田忠明がテーマとして長く取りくむ「淤能碁呂(オノコロ)」とは、古事記、日本書紀の国生みの神話に登場する、日本国の原点となった国土のことである。記紀の述べるところによれば、イザナギ、イザナミ両神は手に持つ矛の先からしたたり落ちた海水が凝固した、このオノコロにまず天から降り立ち、やがて本州、四国、九州などの大八洲、すなわち日本を産むことになる。
作者は原初の神話にことよせて「時代を超えた日本美を追求、探索しようとした」と語るが、そのよってきたる淵源を現代の視点から振り返ってみた日本の美は、シンプルで大胆な振幅のなかにも、かえって優雅でしなやかな形象と色彩を獲得している。
原型なるがゆえに全ての束縛から解放される一方、繊細優雅な対極を視野に収めて微妙なグラデーションを捉える手腕は、剛にしてよく柔を制する。
この画面に懐胎される自由な存在感や将来への可能性は、作者の確固たる意図のうえに花開いて、タイトルが示す挑戦の気配さえ軽々と超越して心地よい。
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