陶芸界にひときわ異彩を放つ巨匠北大路魯山人(1883~1959)は、天性の審美眼と独自の美意識を持ち、陶芸のみならず多彩な芸術分野にその才能を発揮しました。
魯山人は十代にして、まず書・篆刻の分野で名を上げ、当時の著名な画家達はこぞって魯山人に印章の制作を依頼したといいます。そして、書の依頼を通じて優れた美術愛好家たちと交流し、美に対する鑑識眼と美食への関心を深めました。そしてこれが後に魯山人を高級料亭「星岡茶寮」の経営へと向かわせ、自らの作る料理を盛り付ける器の制作へと繋がって行きました。
「うつわは料理のきもの」という魯山人は、四季折々の料理に合わせた器をつぎつぎに制作し、発表していきました。陶芸を専門的に修業したわけではない魯山人は、自ら作陶するだけではなく、生地を腕の立つ陶工に指示して作らせたものに手を加えたり、絵付けを施すことで独自の世界を表現しました。星岡窯と名付けられた彼の工房の開窯時には、荒川豊蔵も陶工として招かれています。
和菓子の老舗、宗家 源吉兆庵は早くから魯山人の作る器の優雅さと、和菓子のもつ芸術性の共通点に注目し、作品を蒐集してきました。今回は吉兆庵美術館の収蔵品から書画・陶芸・漆芸などの優品80余点を選び、展示します。