白山松哉(しらやましょうさい)(1853-1923)ほど魅力的な作品を残した蒔絵師はいない。どんな名工にも駄作があるものだが、松哉の作品には一切駄作がない。全ての作品が美しくて気品があり完璧なのである。決して妥協を許さない人だったに違いない。しかも作品は独創性に富み、他の作家の作品とは容易に区別がつく。それは図柄であったり、技法であったりするが、感性そのものの違いと言って良いだろう。
松哉は明治39年(1906)に帝室技芸員に任命された。蒔絵師としては柴田是真、川之辺一朝、池田泰真に次いで四人目の帝室技芸員である。又、東京美術学校(現、東京芸大)の漆芸科の教授としても活躍した。多くの優秀な弟子達を育てたことでも知られており、中でも守屋松亭(もりやしょうてい)、鵜沢松月(うざわしょうげつ)たちは多くの名品を残した。今回の展示では弟子達の作品も一緒に展示し、その共通点、相違点等も楽しんで頂けたらと思います。又、同時に松哉の息子で画家として活躍した白山春邦(しらやましゅんぽう)の作品も展示します。