日本の食卓を洋風陶磁器が彩るようになっておよそ100年。日本独自の洋食器誕生までには様々な歴史がありました。本展は明治時代末期から昭和初期にかけて世界を魅了した和製洋食器と、昭和初期に国内市場向けに生産された洋食器を併せてご紹介し、近代洋食器の華麗なる展開を概観するものです。
和製洋食器の生産は明治期に海外市場参入を志した先人達によって始められました。中でも森村組(現在の森村商事)は洋風絵柄を取り入れた日用食器の生産にいち早く着手し、日本冬季合名会社(のちの日本陶器、現在のノリタケカンパニーリミテド)設立以降も素地の研究、図案の改良と様々な努力を重ねて行きました。当時の流行を積極的に取り入れたスタイルや絢爛豪華な装飾が次第に注目を集めるようになり、「NIPPON」と呼ばれたそれらの陶磁器は北米市場を席捲するまでに至ります。
1929年の世界恐慌を酒井に海外市場が縮小すると、日本陶器をはじめとする日本の陶磁器メーカーは海外市場開拓から、国内における販路の拡大へと方向転換をはかります。同時期に西洋文化が日本に伝播したこともあり、日本の食卓における洋食器の需要は次第に増してゆきます。そのような時代の要求に応えるように、日本人好みの洋食器が生産されるようになり、日本独自の洋食器文化が誕生、発展してゆきました。
本展では、明治期に各窯業地でつくられた輸出用陶磁器、煌びやかな装飾を纏ったオールドノリタケ、さらには大正レトロ昭和モダンを感じさせる懐かしい洋食器までおよそ200点を展示し、近代洋食器の変遷をたどります。