古代の中国では、簡便な方法で複写をする拓本の技法が考案されました。現存する最古の拓本は、敦煌の蔵経洞(第十七窟)で発見された唐時代の「温泉銘」ですが、拓本の起源はそれ以前にさかのぼると考えられます。しかし唐時代の拓本は、ごくわずかしか残されていません。
広義には、歴代の石刻を「碑」と総称しています。碑は隷書や楷書など、荘重で整斉な書体が多く用いられます。一方、書法を伝えるために木や石に名筆を刻したものを「帖」といい、行書や草書など実用の書体が多く占めています。
宋時代には、上質の紙や墨が製造されるようになり、拓本の技法も多様になります。上等な拓本は、工芸意匠の粋を尽くした、えも言われぬ美しさがあり、収蔵家の垂涎の的となりました。
毎年恒例となった東京国立博物館と台東区立書道博物館との連携企画、今回は、書の学習において最も基本となる中国の著名な拓本を、その流転にも目を向け、さまざまなエピソードをまじえてご紹介します。原石がすでに亡佚した貴重な唐拓・宋拓や、王義之の名品など、世界有数の拓本を一望できる貴重な機会です。本展を通して、拓本の持つ魅力を存分にお楽しみください。
※会期中に展示替えがあります
前期:3/15~4/17
後期:4/19~5/15