瓦は日本で発明されたものではありません。今から約1400年前、飛鳥寺建立のために朝鮮半島の百済よりやって来た技術者が、瓦の作り方や紋様を我が国に伝えたのがはじまりです。そのため三国時代の百済の瓦と飛鳥寺創建当初の瓦はよく似ています。
東アジアの瓦は、さらにその系譜をたどれば中国にいきつきますが、中国の瓦は紀元前11世紀に起こった西周で作られたものが起源です。当初は紋様のない瓦で屋根を覆っていましたが、やがて軒先に紋様をもつ軒瓦や棟端を飾る鬼瓦などが生まれ、甍(いらか)を豊かに飾り始めました。軒瓦は軒の先端部分を飾る瓦のことで、丸瓦の列の先端部分を軒丸瓦、平瓦の列の先端部分を軒平瓦とよび、それぞれに独特の紋様と長い歴史をもっています。瓦に表された意匠はやがて現代の伝統工芸にも生かされるようになります。
今回の企画展では、当館が所蔵する瓦の中から東アジアの瓦を概観し、瓦の歴史と瓦がもつ紋様の美しさを、考古学と美術史の観点から眺めてみたいと思います。