平山郁夫先生(1930年6月15日 - 2009年12月2日)のライフワークともいえるシルクロードへの取材の旅は、1966年のトルコ・カッパドキア訪問を皮切りに、西アジア、中央アジア、東南アジアの各国、インドや中国といったユーラシア大陸全土に及び、40年以上もの歳月をかけたものでした。それぞれの地に伝わる文化遺産と向き合うとともに、その地に生きる人々と交流を重ね、幾多の名作を発表されたのでした。
その華々しい画業は多くの人が知るところですが、その偉業は作品制作のみには止まりませんでした。取材の旅路で目にしたものには美しい風景ばかりでは無く、紛争や自然災害などで崩壊の一途を辿るもの、略奪等の危機に直面するものなど様々です。そしてこれらの文化財の喪失を防ぐことを目的に提唱されたのが<文化財赤十字活動>であり、精力的に実践されたのでした。
文化遺産を美術作品として描き、広く公開することは、その地で生きる人々が自分たちの民族がもつ歴史や文化を誇りとして再確認するとともに、他者からするとその魅力や重要性を認めるという相互理解を願ってのことだったのでした。
本展ではこの願いのもと、平山先生が見つめ続けた<シルクロード>各地に遺される文化遺産の数々を描いた作品を、東から西へ辿る形でご紹介いたします。