歴史ブームといわれる昨今、絵画においても歴史上の人物や物語の主人公に熱い視線が注がれています。絵画には風景画、人物画など様々なジャンルがありますが、中でも歴史画は花鳥画と並んで「日本画らしさ」を語る上で重要な要素といえましょう。
歴史上の人物や事件を江方武者絵や物語絵は近代以前にも数多くありました。しかし明治以降、西洋文化が流入すると、歴史的主題や宗教的主題を尊重する西洋のアカデミズムの価値観の影響により、「歴史画」が洋画家を中心に描かれるようになっていきます。一方、極端な欧化政策への反動としての国粋主義的思想や、輸出の経済効果を狙った政府の思惑などにより、日本画が復興したという背景によって、日本画家たちもまた、日本や東洋の歴史的主題を盛んに取り上げてきます。この流れはのちに、岡倉天心を中心とした日本美術院系の画家たちによる日本画の革新へと展開していきました。こうして歴史画はそれまでの歴史物語の単なる挿絵的な位置づけから、一つのジャンルとして確立してゆき、特に院展を中心に多くの作品が生まれることとなったのです。
本展覧会では、古典を忠実に学んだ伝統的な画風から、想像力豊かで独創的な作品まで、当館所蔵品より幅広く選びました。日本画をとおして、日本の歴史に思いを馳せていただける展覧会となっています。