『源氏物語』宇治十帖の舞台、宇治。
物語の終焉にふさわしい風光明媚な宇治には、かつて多くの平安貴族が別荘を営んでいました。平等院の前身は、『源氏物語』の主人公・光源氏のモデルとされる源融の別荘だったと伝えられています。
平成21年6月20日、『源氏物語』ゆかりの平等院に、書家・右近正枝氏より『源氏物語』の写本・全54帖が奉納されました。この写本は、右近氏が古筆への思いと『源氏物語』への熱意を込め、一年の歳月を費やして完成された大作です。作品に使われた料紙は、王朝美術作家・大貫泰子氏が一紙一紙、丹精を尽くし手がけられました。
平安時代随一の才媛・紫式部によって書き上げられた『源氏物語』―。平安人の雅な心は、現代を生きる女流作家へ見事に受け継がれ、右近本『源氏物語』が誕生しました。流麗なる書と華麗なる料紙の競演をお楽しみください。