東京都写真美術館では1998年11月から99年1月に「ラヴズ・ボディ ヌード写真の近現代」と題した展覧会を開催し、好評を博しました。ヌード写真をエロスや性の表象としてだけではなく、関係性や主体性などの視線の力学によって捉え直し、新たな身体の表象の可能性や意味を考える展覧会でした。「ラヴズ・ボディ 生と性を巡る表現」は、そうした現代の身体表象から導き出された問題をより鮮明にしようとする試みです。
現在、世界が共有する問題としてエイズがあります。1980年代後半から90年代前半、エイズは単なる不治の病として多くのアーティストの命を奪っただけではなく、「エイズ」を巡ってあぶり出された社会的偏見や差別、社会への疑問が、写真・美術のあり方を根本的に問い直す契機となりました。
エイズを抱えた多くのアーティストがエイズに向き合い制作することで、この「社会的病」を自分たちの問題として捉え、エイズがわたしたちに問いかける様々な作品が生まれました。そして今も、セクシュアリティの変容や他者表現、身体表象、アートと政治の問題など、新たな表現の可能性を思索しています。この展覧会は美術や写真のある側面に大きな変化を与えるほどに影響力を持つそうした作品の意味を検証し、問い直す試みです。