近代の都市域は都市人口の増加に伴い、その範囲を拡大していきました。都市内部の景観も交通網の発達や市民の生活の利便に対応するため変わっていきました。都市内部の城跡などは、市民が余暇利用に供する公園や観光地となり、鉄道など交通網の発達によって、徒歩では困難であった名所旧跡にも容易に観光旅行をすることができるようになりました。パノラマ地図(観光鳥瞰図)は多くの人々が観光案内書を手にして各地を旅行する時代の要請によって、数多く製作されました。それを担ったのが吉田初三郎をはじめとする商業画家でした。
主に大正時代末から昭和時代に制作した作品に描かれた日本の各地の都市や、交通網の発達で多くの旅行者が訪れた観光名所である景勝地、寺社、公園などは、当時の景観を読み取ることができる貴重な資料となっています。
本展では、主に大正時代末から昭和時代に各地を描いた貴重なパノラマ地図の原画などを展示し、近代の描かれた都市の姿と観光名所の様相を紹介すると共に、堺の郷土画家岸谷勢蔵が描いた堺の昭和時代の景観も紹介します。