中国では古くから、墓主の霊魂が死後の生活で不便のないように、墳墓の中に様々な副葬品が納められてきました。そうした副葬品(名器)のうち、やきものでつくられた人形の像(俑)のことを「陶俑(とうよう)」と呼んでいます。人物のみならず動物の像なども俑の中に含まれることがあり、秦の始皇帝の兵場俑は、その代表的なものとして知られています。
こうした俑は、20世紀初頭、中国での国家事業として行われた鉄道敷設工事などに伴う墳墓の発掘により、はじめて世に知られるようになりました。
発掘された陶俑は、主に欧米諸国の人々によってその美的な価値が見出され、蒐集、研究、鑑賞が行われるようになります。今世紀に入り、経済成長著しい中国では、さらに新たな陶俑が発掘され、その魅力はますます大きなものとなっています。
松岡コレクションの陶俑は、創立者松岡清次郎(1894-1989)が蒐集した中国陶磁コレクションの主要な一角を占めています。本展では、そうした陶俑コレクションから、漢時代(紀元前206年~紀元後220年)、北魏時代(386年~534年)の灰陶加彩俑などをはじめ、俑の製作が最も高揚した唐時代(618年~907年)の装飾性豊かな唐三彩俑など約40件を展観し、中国古代の生活風習やその生き生きとした造形美の魅力に迫ります。