1890年頃からヨーロッパ各地で起こった様々な美術の革新運動は、フランスでは「新しい芸術=アール・ヌーヴォー」とよばれました。それは、あらゆる造形分野で新しい時代にふさわしい表現を生み出そうとする芸術家たちの強い意欲の現れでした。そして同時に、職人芸の手づくりの良さを残しつつ、大量生産という時代の要請に応えた合理的な量産システムを構築しようとした試みの成果でもありました。曲線美を多用したそのスタイルは、全ヨーロッパからアメリカまで急速に広まり、20世紀初頭には一世を風靡しました。
今回の展覧会では、定評ある北澤美術館のガラスコレクションから厳選された130余点の作品(エミール・ガレ約60点、ドーム兄弟約40点、その他の作家約30点)が公開されます。19世紀末からわずか20数年間の短い間に花開きそして消えていったアール・ヌーヴォーのガラス工芸で、ベル・エポック(古き良き時代)の余韻が楽しめます。
エミール・ガレやドーム兄弟などフランスのアール・ヌーヴォーを代表する工芸作家の名品の数々は、今では再現不可能な驚異的な名人芸を駆使して創られたものばかりです。作品の豊かな色彩美や自然観察にもとづく優美な草花の表現は、この展覧会の見所の一つといえます。
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