辻清明(つじ・せいめい、1928-2008)は東京多摩で活躍した陶芸家です。おもに信楽をはじめとする焼締陶を中心に独創的な作品を制作し、高い評価を受けました。 その一方で、辻は幼い頃から骨董、古美術に興味を示し、日本、中国、朝鮮をはじめ、ヨーロッパや南アメリカほか世界中の古陶磁や、漆器や鉄器などの工芸品も幅広く収集し、個性的なコレクションを作り上げました。
中でも、古信楽の陶磁作品に日本人の魂を見出し、その美を「明る寂び」と称し、「宿命を素直に受け入れ、自然と合一する静寂な世界を言うだけでなく、優美で伸びやかで、夜明けの空に似た、明るく済んだ気配がある」と語っています。
この展覧会では、昨年度にご遺族からご寄贈いただいた472件の作品とコレクションの中から主だった作品を選定し、「明る寂びの世界」を紹介いたします。