厳しい自然界を懸命に生き抜く鳥たちの姿に魅せられて長年制作を続けてきた上村淳之は、祖母に上村松園を、父に上村松篁を持ち、明治、大正、昭和、平成と100年以上にわたって美の系譜を継承してきた上村家三代目となる日本画家です。
本展では喜寿を迎え、ますます奥深い画境へと歩を進める淳之の世界を、新作を中心に紹介します。50年以上にわたる画業において培われ、今また新たな境地を切り開こうとする淳之の作品からは、現代の花鳥画を担う気魂が感じられ、伝統を根底としながらも革新的作品に挑む意欲が伝わってきます。余白という東洋独自の象徴空間に描かれる鳥たちを通して、現代社会から失われつつある自然の大切さを見直す機会となれば幸いです。
また、併設展示では松園と松篁の作品も展示し、淳之に受け継がれた上村三代の原点をひもときます。