欧米でも日本でも、脇田和の絵と似ている作品を探すのは難しい。彼は97年の生涯をかけて、自分にしか描けない絵画の完成をめざしました。また、鳥・花・子供といった身近にある可愛らしい対象をモチーフに描くことが多く、その優しさ、清らかさ、温かさを表す画風でもよく知られています。脇田の絵の中の鳥たちは、笑ったり、怒ったり、悪戯をしたりとひじょうに人間的な姿で登場し、それらが私たちの日常生活への愛情や風刺を表現しているばあいが数多くみられます。作家で詩人の井上靖氏は、この抒情性に富み多面的な魅力を持つ画風について、「いろいろな心の洗われ方をする」と評し讃嘆しています。
生前、脇田和は「自分の絵に着物を着せてみたい」と語っており、その夢のかたちが現在の脇田美術館のデザインに実っています。軽井沢の自然に融けこんでいる外観。中庭から見られる旧アトリエのたたずまい。 当美術館の収蔵作品は、油彩、ドローイングを中心に約1,000点。脇田和のドイツ修業時代から、新制作協会創立時代、戦後の国際的な活動、20世紀末へ続く息の長い創作活動まで、色彩の詩人といわれる画業の全貌を跡づける展示をおこなっています。