星野道夫は、19歳の時、アラスカの小さなエスキモーの村シシュマレフの空撮写真と出会い、面識もなければ住所も分からぬまま、シシュマレフの村長に「あなたの村を訪ねてみたいのです」と手紙を書きました。そして、20歳の夏にそれを実現させます。三ヶ月の滞在のなかで、彼は、自然とともにあるエスキモーの生活を知り、いよいよアラスカに魅せられ、写真家としての道を歩き始めます。それから20年余り、星野道夫は、永遠の狩猟者のようにカメラをかついでアラスカに分け入り、極北アラスカの自然と人間の始原の姿を追い求め続けるのです。
この地球に人間として生きているということ。あらゆる生命のめぐりを包み込んで、自然は厳然と存在しているということ。自然と人間。動物たち、植物たち、あらゆる生命の始原の姿。星野道夫が生涯をかけて目指したものがなんだったのか。96年に自然へと還っていった星野道夫の魂が、現代文明に浴して生きている私たちを激しく打ち続けるのは何なのか。
彼の写真の深い沈黙の奥から、真の言葉が、静かに感じられることと思います。