北イタリアの水の都ヴェネチアで創作される繊細で優美なヴェネチアン・グラスは、ヨーロッパを代表するガラス工芸として、王侯貴族を中心に多くの人々を魅了してきました。ヴェネチアン・グラスの歴史は13世紀頃に始まり、15~16世紀ルネッサンス時代に「黄金時代」を迎えます。その後衰退の兆しが見えましたが、近代になると装飾性の豊かさや多彩な色彩の様式からモダンで新たなガラス芸術の創造へと変貌を遂げます。
19世紀、ヴェネチアン・グラスで特に人気を集めた作品は、ドルフィンやドラゴン(龍の落とし子)などの身近で愛くるしい海棲動物をモチーフとしたもので、しなやかな動きと柔らかな形状のガラス作品です。20世紀には、モダンなデザインとシンプルな造形、抑制された色使いを特徴とした新しいヴェネチアン・グラスが誕生しました。
本展では箱根ガラスの森美術館のコレクションより、とりわけ近代に創作された新しい様式のヴェネチアン・グラスを展示紹介致します。ヴェネチアン・グラスの変貌と新たなガラス芸術の世界をご鑑賞いただきます。
繊細なガラスの小世界は儚く華奢でそれゆえにいっそう美しく輝きを放ち語りかけてくれるでしょう。