section 1:隠れたリズムを探せ
本展の会場には図面や模型がほとんどありません。「情報を読んで理解する」展覧会ではなく、「感覚を研ぎ澄ませて体で考える」展覧会にしたいというバルモンドは、会場の冒頭をたくさんの写真やドローイングで埋め尽くします。
身の回りの自然に向けられたバルモンドの目は、その表面の美しさだけでなくその内側に息づく秩序(オーダー、リズム)を探しだし、それを幾何学へと展開させていきます。たとえば、枝分かれをくり返す木の成長や、葉のすみずみまではりめぐらされた葉脈など、私たちのまわりの自然は単純なルールにもとづきながらおどろくほど豊かで複雑な姿を見せています。gallery 1では、「自然はもともとすばらしくデザインされている」というバルモンドの視点で自然のエレメントを体験し、その奥に隠された美しいリズムを探ります。
section 2:成長し続ける建築 しくみそのものをデザインする
建築にとって、構造とは建物全体を支える骨であり、地震などの衝撃を分散して逃がす筋肉のようなものです。従来の構造設計では、設計された建物の必要な部分に骨や筋肉をつけて建物に強度を与えることが目的です。しかしバルモンドの構造デザインは、こうした骨や筋肉のネットワーク自体にリズムを与えて建物全体に運動エネルギーのみなぎりを与え、動かないはずの建築に流動性、柔軟性をもたらそうとします。しかしどうやって? バルモンドはその答えを自然界に見出します。
自然界の植物や動物は遺伝子に組み込まれたリズムに従って、周囲の環境など外的な要因の影響も受けながらふたつと同じもののない形へと成長を続けます。バルモンドは建築も同じようにできないだろうか、と考えます。 水平・垂直の決まりきった柱や梁で構成された四角四面の建築ではなく、自然のように自ら育っていくような、複雑な要素や条件をおおらかに受けいれる豊かな建築ができないだろうか?
バルモンドは自然の中に隠れた秩序があることに注目し、建築構造に独自の秩序を与えることでこのような建築を可能にしました。バルモンドの仕事とは、ディテイルのデザインではなく、生きた建築を成り立たせるしくみそのもののデザインです。gallery 2では、空間にひろがる《H_edge》《Danzer》など大型の作品によって、バルモンドの考えるしくみを建築・・・