開港以後、新しい街並みの主役となった洋風建築を特徴づけたものは、それまで日本にはなかった煉瓦や西洋瓦(フランス瓦)などの建設材料でした。幕末に来日したフランス人実業家アルフレッド・ジェラールは、横浜山手に瓦工場を建設し、日本で初めてフランス瓦の製造に成功します。ジェラールの工場は蒸気機関を備えた近代設備を誇り、彼の名前を刻んだフランス瓦のほか煉瓦や土管を製造していました。ジェラールの瓦は、横浜居留地を中心に多くの西洋館の屋根を彩りましたが、その範囲は横浜にとどまらず東京方面にも広がっていたことが、各地の発掘調査から判明しつつあります。
本展示では、フランス瓦誕生の地である山手のジェラール工場を中心に、洋風建築の広がりの背景にあった黎明期の近代産業のすがたを紹介します。