世の中にはプラスチックやビニール、木材や金属など多くの素材が溢れています。その中で、一般的には「紙」だけが、それ自体が商品(製品)にもなり、包装材にもなり、宣伝媒体にもなる素材です。そのことを紹介した、2007年度「紙のための紙 ~引札・レッテル」展は、多くの来館者の好評を得ました。今回は、その続編として、前回の展示でも大変人気のあった「引札」に焦点をあてて、「紙のための紙」を紹介いたします。
引札は商品の宣伝や開店の披露などを書いて配る広告の札で、現在のチラシにあたります。“お客を引く札"からその名がついたともいわれ、商業活動が活発になった江戸時代の中頃から盛んに使用されるようになったようです。あらかじめ様々な図柄を一部の空白を残して描き、そこに後から店名や商品名を入れて仕上げる、という方法で製作されました。江戸時代は木版印刷でしたが、明治に入ると銅版や石版などの印刷技術の進歩によって、より鮮明で華やかなものになっていきました。
今回は、紙の博物館の所蔵資料のうち、紙屋や紙製品など“紙"に関するものを中心に、新収資料も併せて展示いたします。鮮やかな引札を通して〝紙の紙による紙のための紙〟の世界を、再びお楽しみください。