現代に鋭い視線を向けるアーティストの珠玉の作品に焦点を絞って紹介する個展シリーズ“Focus”の
第3弾です。今回は、社会の抱える様々な矛盾や軋轢を、自分自身の問題としてとらえ、正面から向
き合って考えることから作品を生み出し続けているアーティスト、高嶺格(たかみねただす/1968年
鹿児島県生まれ)の作品「スーパーキャパシターズ」をご紹介します。
「スーパーキャパシタ」とは、市販されている蓄電装置の名前です。乾電池やバッテリーに比べ、安価
で安心な素材で製造できる上、劣化しにくく長期にわたって繰り返し使用できるといった画期的な性
質を備えています。代替エネルギーへの取り組みが急がれる昨今、このキャパシタや太陽電池をはじ
めとして、持続可能性を視野に入れた新技術の研究開発が盛んに行われていますが、一方で、この
ような技術や考え方が確立されたとしても、それが市場の中で既存の技術と入れ替わるまでには、か
なり時間がかかってしまうという問題があります。いいはずのものがなかなか普及できない、高嶺はこ
のジレンマに注目し、美術の力をもって普及の加速化を試みます。すなわち、これら新技術にイメージ
を与え、ブランド化を仕掛けることで、一刻も早い低価格化を目論むのです。
2008年スタートした(*)高嶺の「スーパーキャパシタ」キャンペーンは、その後の技術革新も反映し、
新たなアイテムをつけ加えて、2010年さらなる拡張を図ります。
(*)2008年7~9月、アラタニウラノ(東京)にて個展「The SUPERCAPACITOR/スーパーキャパシタ」を開催。