いわさきちひろ(1918-74年)は、「子ども」を生涯のテーマとして描き続けた画家です。子どもたちのいきいきとした動きやかわいらしい仕草、肌の弾力感や繊細な心まで映し出した表情からは、画家としての鋭い観察力と同時に、一児の母親でもあったちひろの愛情に満ちたまなざしも感じられるでしょう。
ちひろは、みずみずしい生命力に満ちた子どもたちの姿を描く一方で、戦禍にさらされ苦難の中で生きる子どもたちの姿も描いています。『わたしがちいさかったときに』は、広島で被爆した子どもたちの手記に絵を描いた絵本です。自らも戦争を体験したちひろは、作品を通して命の大切さを語り、「世界中の子どもみんなに平和としあわせを」という願いを伝え続けました。
本展では、ちひろ美術館が所蔵する作品の中から、代表的な子どもを描いた作品や、絵本原画、素描、スケッチ等、125点を展示します。西洋で発達した水彩画に、東洋の水墨画のにじみやぼかしといった絵画技法を生かしたちひろ独自の絵画表現もお楽しみいただけることでしょう。また、事前に募集したちひろ作品への皆様からのメッセージも作品とともにご紹介します。