私たちが暮らす日本は、美しい自然に恵まれた地に、四季の変化が訪れて模様替えを繰り返す、変化に富んだ暮らしがあります。そのなかで、きまって季節の移ろいを告げて咲く華は、古くより人々の心を豊かにし、また癒してくれる存在でもありました。このように私たちと特別なかかわりを持つ花は、生活の中に深く溶けこみ、、また、芸術の分野でも様々な形で表現されてきました。
鳥などに草花を描いた伝統的な日本画の様式である花鳥画は、それこそ花が主役となっている作品です。しかしながら、花はこれ以外の歴史画や人物画などでもたびたび登場し、それが作品のなかで重要な要素となっているものも少なくありません。
このように、花を取り上げた作品には、花そのものが持つ魅力だけではなく、描く側が託した特別な思いや、見る側の経験や感性が深くかかわり、私たちに豊かな余韻を与えてくれます。
本展覧会では、日本画、洋画、版画、工芸など様々なジャンルにわたる所蔵品から「花」を、キーワードに作品を紹介し、様々な表現をとおして、花と私たちとのかかわりを考えようとするものです。