当館が所蔵する豊かなヨーロッパ版画コレクションのうち、イギリス出身の6人が芸術家による版画約80点を紹介いたします。
主な出品作品は、18世紀、中産階級の社会道徳を主題にしたウィリアム・ホガースの連作版画、19世紀初め、ダンテの叙事詩を宇宙的スケールで描いたウィリアム・ブレイクの『神曲』、20世紀ではポップ・アートの先駆的存在といわれるリチャード・ハミルトンの版画集『祖国アイルランド』のほか、ヘンリー・ムーアやケネス・アーミテージといった現代イギリス彫刻界を代表する芸術家達による版画などです。時に皮肉を込め、時に温かい目で、人間や風景、そして時代を見つめる芸術家たちは、版画という手法を用いて独自の表現を生み出しています。そこには長い年月をかけて、多様な文化をとり込んで形成されたイギリスという国で育まれた芸術家たちの人生観、宗教観、芸術観が映し出されているのではないでしょうか。これらの版画を通して、歴史と伝統の国イギリスから、時代を超え、地域を超え、今のわたしたちに送られた芸術家たちのメッセージを読み取っていただければ幸いです。