「絵画は自然を歌う手段である」
大正から昭和にかけて、近代洋画壇の重鎮として活躍した画家、中村研一(1895~1967)。画家が小金井に移り住んだのは戦後まもなくのことですが、竹林や湧水など、豊かな自然が気に入ってこの“はけ”の地を選んだそうです。スケッチブックを携えての散歩から生まれた作品も少なくありません。「よい絵はかならず人を生きさせるものになる」……自画像の背景に自作の絵を描きこんだ、何よりも描くことを愛でた画家でした。「絵は自然を見ながら描くけれど別個のものをこしらえている」「芸術は自然と並んでしかも別種のもの」と語り、描くことを「歌う手段」とした画家。
春から初夏にかけて、一斉に芽吹きの季節を迎えるはけの森美術館で、生き生きとした人体や季節の風物など、油彩、素描、陶器などそれぞれ音色の異なる画家の制作を“自然”に注目し展観いたします。伸びやかな画家の歌をお楽しみ下さい。