伎楽面は伎楽に使った仮面です。伎楽は、飛鳥時代から奈良時代に主に寺院の法会で演じられた歌舞劇です。伎楽に「クレガク」あるいは「クレノウタマイ」とルビが付けられていること、推古天皇20年(612)に百済の人が呉に学んで伎楽を伝えたことが『日本書紀』に記されていることから、中国の揚子江の南、呉と呼ばれた地方に関係があるようです。しかし、伎楽は平安時代頃には廃れてしまったため、どのような内容のものかはっきりしません。面は、後頭部の上の方まで作ってすっぽりかぶる大きなものです。法隆寺献納宝物中の面の材質は三種あり、クスノキ材製19面、キリ材製9面、乾漆製3面。クスノキ材製の面が飛鳥時代7世紀、その他は8世紀の作です。中でもクスノキ材製の面は、飛鳥時代の木彫の稀少な作例として重要な作品です。