1975年に長野県で生まれた本間友幸は、薔薇貫入釉(貫入青磁釉)と呼ばれる釉薬を使った作陶活動で注目を集めている若手作家です。
貫入とは、陶磁器を焼成した後の冷却の温度変化で、素地と釉薬とが異なる縮み方をすることから釉薬に生じる、ひび割れのことをいいます。古来、中国ではこのひび割れ模様を珍重し、約千年前の宋の時代には、貫入を意図的に生じさせた青磁を宮廷直轄の官窯で生産していました。釉面に変化をもたらし、その奥深さを際だたせるひび割れの芸術性が尊ばれたのです。
本間が追求している貫入釉は、伝統ある青磁の貫入をさらに発展させたもので、その名前が示すとおり、薔薇の花びらを敷き詰めたような可憐で繊細な情趣をたたえています。モダンな造形と歴史的な技法を調和させた薔薇貫入釉の世界は、伝統を継承しつつ新たな美の創作に挑む作家の姿勢を物語るものといえます。気鋭の陶芸作家の最近の成果を是非ご高覧ください。