野村義照画伯は1945年大阪府に生まれ、東京藝術大学日本画科を卒業後、同大学大学院古典研究科に進んで研鑽をつみました。院展を中心に出品を重ねる一方、文化財保存修復事業に携わるなど、多様な経験を重ね豊な画業を生み出しました。1977年より作品のテーマを求めてギリシャ、イタリア、フランスなどのヨーロッパ諸国を精力的に赴き、国内外で作品を発表して、国際的な活躍を展開していきました。
野村画伯の作品にはヨーロッパの遺跡や聖堂が数多く登場します。荘厳な古代ギリシャ神殿、ゴシックの尖塔、協会のレリーフなど、西欧精神世界の証ともいえる石造建築をとらえた重厚な画面。そこには魂の根源を成す領域に分け入って、人間の有り様を再確認しようとする画家の意識が投影されています。深く沈潜する時を包み込む群青色に彩られた作品は、現代日本画壇においてひときわ異彩を放っています。
日本の風景と人物から始まり、ヨーロッパ世界を遍歴してきた画題は、近年、再び原点である東洋へと回帰しつつあります。本展では、畢生の名作「暮色」をはじめ、初期作品から近作まで、洋の東西を超えて様々な時空間を描いてきた画業の歩みを紹介いたします。