上村淳之(1933- )は現代日本の代表的花鳥画家として高い評価を得ている作家のひとりです。祖母・上村松園、父・上村松篁も高名な日本画家で、三代にわたる日本画家一家としても知られています。
氏が祖母・松園が疎開し、晩年を過ごした地である奈良・平城の「唳禽荘」に移り住み、画題となる鳥たちを飼育しながら描かれる花鳥画は単なる花鳥画ではなく、日本画の伝統を踏まえた象徴的空間に、自然の中に生きる鳥たちの生命の美しさ、そしてその声を表現するという独自のものです。
こうした独特な画風は、飼育者としての目と表現者としての目が一体化した中で築かれたものといえましょう。
本展は、上村淳之氏ならびに財団法人松柏美術館をはじめとする関係各位のご協力のもと、同氏の初期から近年にいたる作品の数々を展示し、鳥たちとの対話を通して、自然を鋭く見、それを作品として表現する氏の花鳥画の世界と画業を紹介するものです。
花鳥画独特の装飾性に加え、醸し出される象徴的世界に誘う画風に接し、ご鑑賞いただく好機となれば幸いです。