中央アジアのオクサス川沿いに栄えた、バクトリアとソグディアナ(現アフガニスタン、ウズベキスタン、タジキスタン周辺)は、古くから貴金属・貴石を供給する国として知られ、古来メソポタミアとインダスの古代文明をつなぎ、アレクサンドロス東征以降は地中海文化と、西アジア、インド、スキタイ文化などを融合する文明の要衝を形成しました。中世初期にシルクロード交易の主役を担ったソグド人は、こうした中央アジアの文化を東に伝え、やがて唐の国際文化創生にもつながって行ったのです。イスラム・ペルシア世界においても、ソグディアナは東西交易で栄え、政治・文化の中心となりました。
本展は、タジキスタン共和国国立考古博物館から、古代バクトリア、ソグディアナの名品5点を迎え、青銅器時代の中央アジアからイスラム期ペルシアに至る、およそ四千年の広がりを持つ作品百余点を展観します。時代や地域を越え、中央アジアを要として展開した様々な造形芸術の根底に、人類普遍の至福を求める心を感じとって頂けましたら幸いです。