私たちは通常、絵画の表面に目を向けて鑑賞しています。そのとき、絵画は描かれたイメージの定着する場所であり、いわば映画館のスクリーンと同じ役割を果たします。
しかし、すこし斜めから目を注げば、絵具の層やキャンバスの布目を発見し、絵画が厚みのある立体物であることに気がつくはずです。
また絵画が完成してから人の目に触れるまでには、額縁に収まったり、表装を施したりと、さらに厚みを増した状態になる場合もあります。このような絵画の厚みは、展示室で作品と向き合う人の意識にあがることはあまりないかもしれませんが、この展覧会では近現代の日本絵画をコレクションする練馬区立美術館の収蔵作品60点あまりによって、その奥行きに注目してみたいと思います。
展覧会場には、絵画の裏側を覗いたり、触れたり、厚みを体感できる仕掛けをご用意します。本展をとおして練馬区立美術館のコレクションの「厚み」をご堪能いただければ幸いです。