1924年フランスから発信されたシュルレアリスム(超現実主義)は、文学から美術まで、芸術活動の広い範囲にわたって想像力の解放を促し、夢・幻想・奇想・狂気など人間の深層心理や内的世界といった、かつて誰も見たことのない意識下の世界に人々を誘いました。
シュルレアリスムの原点は、第一次大戦下の社会不安の中で起こった前衛運動ダダで、ダダの合理主義文明と社会体制への否定と破壊の提唱を受け継ぎ、オートマティスム(自動記述法)による潜在意識下の非合理な心象表出を求めたのです。
このシュルレアリスムの新しい手法は、瞬く間に20世紀前半の芸術思潮の主流として認知されるとともに世界中を席捲し、第二次大戦後の世界同時的に派生する抽象表現主義の源泉ともなりました。
本展は奈良県立美術館が所蔵する近・現代コレクションの中で、シュルレアリスムを推進した日本人画家たちの作品や、シュルレアリスムから影響を受けた作品、さらにはシュルレアリスムから派生した抽象表現主義の作品などに焦点を当て、その豊饒なる心象世界を展観していただこうとするものです。
イメージの解放運動と呼ばれたシュルレアリスムの幻想と奇想、そして夢の世界を、十人十色の感性でご堪能いただく機会となれば幸いです。