当館の位置する館林市では、江戸時代以来、館林城(現在の市役所周辺)の東にある城沼(じょうぬま)南面の丘が、ツツジの花の名所「つつじが岡」として知られています。これらのツツジは、歴代の館林藩主の保護育成を受けた樹齢400年以上に達する古木を中心に、さらにツツジの多様な園芸品種も植樹されて華麗さを増していきました。江戸・明治・大正・昭和・平成と続く近世・近代・現代の館林の歴史は、まさにこのツツジとともにあったと言うことができます。
本展覧会は、このツツジの名所として知られてきた館林にちなみ、ツツジの花が華麗に咲き誇るこの季節に「描かれたツツジ」に多面的に迫ろうとするものです。
第1章で近世、近代の花鳥図、そして近代洋画の風景表現や近代都市の風景版画まで、地域にゆかりの植物であるツツジの花を描いた作品を中心に取り上げ、日本美術にはどのようにツツジが描かれてきたのかに迫ります。第2章では『錦繍枕(きんしゅうまくら)』や『本草(ほんぞう)図譜』など、江戸時代を中心とする園芸ツツジの歴史的資料を、そして第3章では館林市つつじ研究所の資料を中心に、つつじが岡公園の歴史の紹介を試みます。花鳥図のなかで主役の松や桜の巨樹の根元に描かれた山ツツジなどの名脇役ぶりから、近代都市や庭園を彩る華やかな園芸品種の刈り込みの造形性まで、様々なツツジの図像を通して、身近な自然のとらえかたの歴史的変遷がご覧いただけることでしょう。