伝統的な水墨画の流れから見渡すと、近代における水墨は衰退の一途をたどってきたように思われます。しかし新たな兆しがないわけではありません。近年、アジアの美術が注目され、日本画の概念が見直されてきたことによって、墨をニュートラルな素材として捉えなおした現代作家の個性豊かな制作が次第に注目を集めるようになってきています。本展はそうした現状をふまえ、水墨によるさまざまな表現の可能性を真摯に追究している作家のなかから特に優れた業績を残し、今日さらに目ざましい活動を展開している11名の作家を選抜し、各作家の近作と新作約30点を紹介して、水墨画の新たな可能性と墨のもつ現代的な意義を探るものです。