福澤諭吉が創設した慶應義塾は、2008年に150年を迎えました。大阪で生まれ、適塾で学んだ福澤諭吉にとって大阪は縁の深い地です。福澤は日本の近代化に様々な面から貢献した思想家であり、教育者であり、ジャーナリストでもありましたが、その在野精神は徹底したものでした。伝統や権力に甘んじることを常に忌避した福澤の在り方は、新しい美術の道を切り開こうとする戦後の前衛的な活動とも一脈通じるところがあると言えます。
芸術専門の学校ではないものの、これまで慶應義塾は、非常にユニークな表現者を世に送り出してきました。シュルレアリスムの詩人であり自ら絵画を描くこともあった西脇順三郎、その教えを受け詩人・批評家として戦後美術を牽引した瀧口修造、西脇を慕い共同制作も行った彫刻家の飯田善國。版画の世界に独自の境地を開いた駒井哲郎。さらに、慶應の建築を数多く手がけた谷口吉郎、その谷口とコラボレーションし慶應義塾内の教員サロン「萬來舎」を手がけた彫刻家のイサム・ノグチ。本展では、これら6人の表現者の世界を、国立国際美術館の所蔵品を中心に、慶應義塾所管の関連資料も含めた展示にてご覧頂きます。