1956年、神奈川県に生まれた長井一馬は、グラフィックデザインを学んだ後、21歳の時に独学で彫金を始めました。1983年には長野県大町にアトリエを構え、アンティーク感覚を加味した独創的な銀の装身具を作り続けています。モティーフは妖精のような人物から自然界の動植物まで非常に多彩です。なかにはムカデやナメクジなど、装身具になじまないグロテスクな生き物をテーマにした作品も含まれています。それらの不気味さとかわいらしさが共存する造形には、単なる職人ではなく、アーティストであろうとする作家の意気込みが感じられます。銀のメタリックな輝きに宝石の鮮やかな色彩を溶け込ませた有機的なフォルムは、19世紀末に一世を風靡したアール・ヌーヴォーの再来を思わせるものさえあります。「骨董的未来派」を自認する長井の、古くて新しい驚異の美の世界を是非ご堪能ください。