工芸作品の意匠には、季節の移り変わりや自然の豊かな営みが映し込まれているものが数多く見られます。とくに、四季折々の変化と豊かさを端的に示す“花”という主題は、陶磁や染織、漆工、金工など、工芸のすべての分野において認めることができるほどに、もっとも一般的で、また、表現の幅が広いものの一つです。言うまでもなく工芸作品は、さまざまな素材と技法が駆使されてつくり出されていますが、その主題から生み出された形や意匠は、同じモチーフであっても、作家の思考や表現により多彩に変化し、時には、観る側にも新たな視点や発見を見せてくれます。
本展覧会では、所蔵作品の中から、春の季節にふさわしく“花”を主題とした作品にスポットをあてます。作家のイメージを映し出した創意あふれる名品の数々をお楽しみください。