アメリカン・リアリズムを現代に受け継ぐ画家として知られているアンドリュー・ワイエス(1917- 2009) は、テンペラという古典的な技法を用いて、細い枯れ枝、あるいは光に輝くブロンドの髪一本一本まで克明に描き出し、まるで時間が止まったような不思議な世界に私たちを誘います。こうした作品はどのように生み出されたのでしょうか。本展では、ワイエスの芸術が生まれる過程に焦点を当て、素描や水彩などの習作から完成作品にいたる創造のプロセスを150点の作品によってたどります。
ワイエスにとって創作の意欲がかきたてられるのは、自分の心にカチッとスイッチを入れる何かを目にしたときであり、フェンシングで相手に向かうような気持ちで画面に向かうと言います。今回ご紹介する多くの素描や水彩画には、ワイエスの対象に対する感動や繊細な心の動きが刻まれています。創造のプロセスをたどるなかで、私たちはワイエスと描かれる対象との間で紡がれるさまざまな物語に出会うはずです。
ひたむきに制作を続けたひとりの画家アンドリュー・ワイエスの生の姿にせまる、ファン待望の展覧会。ワイエスの多彩な魅力を存分に感じていただけることでしょう。