掛川市二の丸美術館では、収蔵品「木下コレクション」より、近世の小さな装身具にスポットを当てた細密工芸尽くし展を開催いたします。今回は煙草道具に限らず印籠・櫛かんざし・刀装具、その他小さな金具に至るまで一堂に展覧いたします。
これらは江戸から明治期にかけて制作されたもので、実用性と装飾性を兼ね備えた装身具として大変人気を博しました。“装身具”とはいわゆるアクセサリーですが、その機能性も絶対条件、美しいフォルムの中に使いやすさと収納力も十分に考慮されています。まさに“用の美”を備え持った一道具と言えます。今回は、普段あまり目にすることのない煙草入れや印籠の裏側、あるいは内側までご覧頂けるよう展示を工夫いたしました。
“裏勝り(うらまさり)”と言う言葉があるように、当時は着物の表と裏では全く違った装いを見せる場合があります。装身具の場合も同様、ひとたびふたを開けると鮮やかな色彩や驚くほど奇抜なデザインが顔をのぞかせるものが存在します。そこには内に秘めた悦楽感と人々の粋心が息づいています。新春のひととき、こんな小さな感動と発見を味わってみてはいかがでしょうか。作品数は400余点にも上りますが、どれも手の平に納まる小さな作品ばかりです。長きにわたり培われてきた日本人の本質と美意識を、これら作品の中に見い出して頂ければ幸いです。