「大正ロマン」という響きには、どこか女性的な香りが漂います。事実、華宵や夢二が描いた作品には、感傷に浸ったり、涙を流したり、ため息をついたりする女性が数多く描かれています。
では男性は「大正ロマン的感性」を理解できないのでしょうか?そんなことはないはずです。男性であっても、センチメンタルな気持ちになったり、涙を流したり、美しいものを見て感動したり、空想にふけったりするはずです。たまたま現代の日本では、「大正ロマン的感性」が女性の専売特許のように思われているだけなのです。
今回の展覧会は、男性(特におじさま・ジェントルマン・ムッシュゥと呼ばれる方々)に、「大正ロマン」の世界を身近に感じて頂きたく、企画しました。一般的に男性は、「大正ロマン」という言葉そのものに何か気恥ずかしさを感じたり、自分とは無関係だと思い込んだりしている場合が多いようです。しかし「大正ロマン」の世界には、豊かな想像力(空想力)を育み、しなやかな感性を培うためのヒントがたくさんちりばめられています。こうした心の栄養分は、男性・女性に関係なく、人間として生きて行く上で、とても重要かつ必要な美的感覚なのです。
展覧会では、「大正ロマン」を理解するためにいくつかのキーワードを設定して、それに沿った作品を展示します。厳しい現実や日常生活から、一瞬離れて、「大正ロマン」という空間に心を解放してみませんか?新しいエネルギーが沸いてくるかもしれません。
この展覧会は、もちろん家族や恋人、友人として女性を同伴されても十分に楽しめますが、出来れば男性がお一人でそっと立ち寄って頂きたい展覧会です。いずれの場合でも、お互いの心や感性のプライバシーを尊重しながら、「大正ロマン」の世界をご堪能頂ければ幸いです。