日本の生活文化において、紙はさまざまな役割を果たしてきました。薄くて強く、独特の風合いと光沢を持つ和紙は、単に書写材料にとどまらず、建具、容器、雨具、衣類などの日用品のほか、信仰に関わるものにも多用されています。木の皮の繊維を用いて、清らかな水で漉き上げる真っ白な紙は、神聖なもの、清浄なものとして、紙=神(カミ)に通じるものともされてきました。祭祀や冠婚葬祭、年中行事など、人が神仏と通じようとするいろいろな場面には、多くの紙が登場します。お正月や神楽の中で、神を迎えるための聖域を形成する「切紙」は、白い紙にさまざまな模様が切り抜かれ、美しく、清らかにその場を演出します。
今回の展示では、この「切紙」を中心に、神霊が降臨する際によりつく依代(よりしろ)となる「御幣」災いやケガレを祓う「形代(かたしろ)」や「流しびな」、五穀豊穣・商売繁盛・家内安全など、幸福を呼び寄せる縁起物である「宝船」や「紙絵馬」など、信仰と関わりの深い紙・紙製品を展示します。