平櫛田中(1872-1979 昭和54年、107歳で逝去)は、長い歴史を持ち、世界に誇る日本の伝統文化である木彫芸術を、近代的な写実表現を基礎にして明治、大正、昭和と展開し、優れた作品を数多く残しました。
特に1931(昭和6)年、59歳で完成した《源頼朝公像》(鎌倉・鶴岡八幡宮内白旗神社に奉納)以来、半世紀にわたり、木彫に岩絵具で彩色を施した作品をたびたび世に問い続けました。87歳で院展に発表した《鏡獅子》(東京・国立劇場展観)は平櫛田中の代表作として広く知られていますが、これも彩色木彫です。
木彫の素材である木と、日本画の絵具である岩絵具(顔料)は日本の芸術の根幹であり、現在においても日本人の心を魅了し続けています。
本展では、平櫛田中作品を中心に、田中の旧蔵していた同時代の作家の木彫作品、田中が活躍した日本美術院(院展)同人たちの日本画、田中が100歳の時に創設した平櫛田中賞作家の現代アートなど、様々な木と岩絵具の芸術を紹介します。明治、大正、昭和、平成の四代に生み出された芸術を展観することにより、日本の素晴らしい伝統を眼で見て楽しみ、実感していただければ幸いです。