中山岩太(1895~1949)は、日本の近代的写真表現を切り開いた重要な写真家です。
1918年に東京美術学校(現・東京藝術大学)臨時写真科を第1回生として卒業し、脳商務省の海外実業練習生として渡米します。21年にニューヨークに写真スタジオを開業した後パリに渡り「フェミナ」誌で嘱託写真家として活躍する一方、藤田嗣治やマン・レイなど先進的なアーティストたちと交流を深めます。27年に帰国。30年に「芦屋カメラクラブ」をハナヤ勘兵衛らと結成し、また32年には野島康三、木村伊兵衛らとともに写真雑誌『光画』を創刊し、モダニズムの感性にあふれた「振興写真」の旗手として日本の近代的写真表現をリードする存在となります。
本展では、作家の手によるオリジナル・プリントに加えて中山岩太の会、芦屋市美術博物館が中心になって調査研究してきた「残されたガラス乾板」をもとにして、銀塩印画紙によるプリントを展示。ニューヨーク時代から晩年に至るまでの主要な作品を中心に、全紙大のプリント約40点を制作するとともに、製作過程を明らかにするガラス乾板などの展示も行います。『光画』などの当時の写真雑誌、関係資料をあわせて約135点の作品と資料を展示いたします。
新たに制作されたプリントは、中山岩太の華麗な写真表現をダイナミックに再現するだけでなく、銀塩写真の危機が叫ばれている今日にあって、歴史的遺産ともいうべき写真原版をいかに後世に伝えていくかという問いかけに対する一つの答えを示す展覧会でもあります。